スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

posted by: スポンサードリンク | - | | - | - | - |

あなたを忘れない。『とある飛空士への追憶』

とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫 い) (ガガガ文庫 い 2-4)
とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫 い) (ガガガ文庫 い 2-4)
犬村 小六
JUGEMテーマ:読書

貴様にひとつ、重大な任務を託したい――
かつての戦争で帝政天ッ上から手に入れた土地は、サン・マルティリアと名を変え、神聖レヴァーム皇国の一領土として、敵国の喉元で数十年もの間君臨し続けた。だが、再び両国の間で戦端が開かれると、今度はどうだろう、先の戦争で戦訓を得た帝政天ッ上の圧倒的有利で戦況が推移し始めた。今や取り残された形となったサン・マルティリアは、本国から派遣された正規空軍と、それと地元の貴族の設立した私設空軍が抵抗を続けているが、陥落はもはや時間の問題。狩乃シャルルは、そんな取り残された土地に留まり、仲間達と共に日々の戦いに明け暮れている傭兵飛空士の一人だった。そんな彼に、本国からとある指令が下される。両国のハーフとしてこの地に生を受け、それまで日陰の道を歩んできたパイロットに与えられたのは、サン・マルティリアに取り残されてしまった皇国次期皇妃ファナ・デル・モラルを背中に乗せ、遙か海の彼方の本国へ送り届けること――

本来ならば巡り会うこともなかった身分違いな二人の姿を、空戦と恋とに絡めて描く。作者は犬村小六先生。レーベルはガガガ文庫。

「次期皇妃を水上偵察機の後席に乗せ、中央海を単機敵中翔破せよ」

ああ、ああ、寝る前に読んでいて、思わず布団の中で口に出してしまいました。隣に住んでいる人ゴメン。別に変な人が住んでいる訳じゃありませんからね。でも、死ぬまでに一度で良いからこんな格好いい台詞を言ってみたいなぁ。言った当人は好かん奴だったけれども。いや、これは面白い。年度末にこんなに面白い作品と巡り会えるとは意外でした。かつて少年時代を経験した人間としては(当たり前か)、この作品の中で繰り広げられる2人の冒険物語に心を躍らさずにはいられませんよ。

そして、ミリタリ好きにもこの設定は堪らない。随所にちりばめられた、作者の自然な文体で綴られる緻密で緊張感に溢れた空戦シーン。登場する航空機も、面白い設定が組み込まれていて、単純な架空戦記とも一線を画している感じ。特に、敵国である天ッ上の主力戦闘機「真電」が格好いい。まあ、分かる人には分かるんでしょうが、モデルは恐らく旧日本海軍が終戦末期に開発していた局地戦闘機「震電」ではないかと。だけど、それだけに頼らず、シャルルとファナの感情の移ろいをきちんとした形で書き上げている点がこの作品の最大の魅力なんでしょうね。水着が……

もう、ラストに関しては分かっていたんです。分かっていたんですけど、それでも最後のシーンには心を揺さぶられてしまいました。物語を盛り上げるだけ盛り上げ、そして、当たり前すぎるほど見事に綺麗な形で収束させたストーリーに感謝。久しぶりにドキドキ感とワクワク感を同時に味わわせてくれたすばらしい作品でした。この先生の作品は初めてなんですが、早速既刊を買いに行ってこようかなと。
posted by: よしきち | ライトノベル感想 | 17:36 | comments(5) | trackbacks(6) | - |

親愛なる友へ。『君のための物語』

JUGEMテーマ:読書

尊大にして魅力的。そして、奇妙。
レーイと名乗るほか、自身について多く語ろうとしない彼との出会いは、ひょんな事から命を落としかけた私が、その手によって救われるところまで遡ることになる。とある女性との一件により、彼の不思議な力を垣間見るに至った私は、それ以来、彼の周囲で起きる奇妙な出来事について深く関わっていくこととなるのだが……。

「君」と「私」の友情を、切なくて優しいストーリーに絡めて描く。第14回電撃小説大賞金賞受賞作品。作者はこれがデビューとなる水鏡希人さん。

読み口は大仰でなく、かといって、心をときめかせずにはいられないストーリー。ああ、これは良いですねぇ。出来ることなら、昼下がりの午後、暖かい日だまりの下でのんびりと寝そべりながらでも読みたい作品です。あと、美味しい紅茶と御菓子があればなお良し。まあ、望むべくもないシチュエーションですね。……すみません、部屋とかトイレで読んでいました。

この物語、「彼」ことレーイという青年と、語り部である「私」とが何だかんだと言い合いながら徐々に親交を深めあっていくという物語なんですが、その過程で描かれる「彼」がらみのエピソードがどれも心温まる良いお話なんですよねぇ。何かを失った代わりに何かを手に入れるという物語の基本にとても忠実で、尚かつ、結末に関しても決して読み手側を裏切らないようなストーリーの運び方が読んでいて心地良いです。文体も落ち着いているし、これは今後の活躍に期待できそう。続編を作れそうな余地も残っているので、次回作にも期待したいところです。
posted by: よしきち | ライトノベル感想 | 23:48 | comments(0) | trackbacks(3) | - |

イタチっ娘、はじめました。『ほうかご百物語』

JUGEMテーマ:読書

キツネやタヌキと同じように、イタチも化けるらしい。美人に化けて人間の血を吸おうと近づいてくる、なんて言い伝えが残されているらしいのだ。美術部の創設に協力してくれたちょっと変わった先輩から聞かされた話だ。いると思えばいる。出ると思えば、出る。妖怪とはそんなものだという。じゃあ、夜の教室で出会ってしまったこの女の子はイタチだとでも言うのか。「……あなたの血、吸ってもいいかな」そういって近づいてくる娘は、とても妖しくて、とても綺麗で……。

純情なイタチさんと「僕」のちょっぴり不思議な放課後物語。第14回電撃小説大賞大賞受賞作。作者はこれがデビューの峰守ひろかずさん。

キツネっ娘やオオカミっ娘など、動物系女の子を数多く排出する電撃文庫から、遂に新たなるケモノ娘が誕生。今度はイタチですよ、奥さん。段々ネタが限られてきて、ややマイナーになってきた感も否めないですが、まあ可愛いから良し。メインヒロインとなる伊達クズリはイタチの妖怪。でも思ったほど凶悪でもなくて、むしろ純情で、顔を真っ赤にしてばかりの女の子。ちょっと変わった嗜好を持つ主人公から、直球ど真ん中の言葉を投げかけられて恥ずかしがる様子は読んでいて頬が緩みます。尚かつ、大人の魅力を求める人のためにもキツネのお姉さんが登場するので、しっかりと押さえるツボは押さえている感じかなと。

そして、妖怪の伝承を織り交ぜた物語にも惹きつけられるものがありました。やっぱり人間は、基本的にこの手の話題に興味が尽きないんでしょうね。作品自体も読みやすいし、誰にでも勧められそうな無難な出来具合です。だけど、少しスパイスが足りないというか、万人向け過ぎるというか、ラノベ慣れした人には物足りなさが残るかも知れないなぁとも思ってしまう。いずれにせよ、今後の展開次第と言うことでしょうか。まだまだ主人公とヒロインの関係にも曖昧な部分が多いので、続編があるのなら続編に期待。
posted by: よしきち | ライトノベル感想 | 15:20 | comments(0) | trackbacks(1) | - |

そして愛が残された。『MAMA』


紅玉 いづき
メディアワークス
JUGEMテーマ:読書

魔術師の家系に生まれながら魔力を殆ど持たないトトは、同じく魔術を学ぶ学友達の間で『落ちこぼれ』と呼ばれバカにされていた。才能を努力でカバーすることも叶わず、先生からも疎まれ、家柄の故あって逃げることも許されない彼女。だが、ふとしたきっかけから「人喰いの魔物」が封印されているという部屋に迷い込み、暗闇の向こう側から聞こえてくる声に耳を傾けてしまう。それが、魔物の封印を解く鍵だったとは知らずに。
斯くして幼い少女は体の一部と引き替えに不思議な力を手に入れ、そして、自身の居場所を失った。強大な力を持つ魔物は、その哀れで愚かな少女に対し、些細な気まぐれから一つの提案を口にする、「ボクに名前をつけてみろ」と……。

「ミミズクと夜の王」に続く二つ目の「人喰い物語」。表題作の他に、書き下ろしの短編を加えた2編で構成。作者は、第13回電撃小説大賞で大賞を受賞した紅玉いづき先生。レーベルは電撃文庫。

本作を読み終え、静かに本を閉じた。
「畜生……」
まただ。また、心の内側から体が甘く痺れていくような感覚。脳内の銭形警部が嬉しそうに語りかけてくる。「奴はとんでもないものを盗んでいきました、それは貴方の心です」やられた!『ミミズクと夜の王』の時と一緒じゃないか。本を(やんわりと)カーペットの上に叩きつけ、そして、両手をつき額を床にこすりつける。「ありがとうございました」と、感謝の意をしっかり込めて……。

いや、この読後感を何と表現したらよいものやらと思いまして。

前作同様、「全米が泣いた!」的な感動はありませんでした。ただ、物語を読み終え、本を閉じ、床に置いてから、ようやく込み上げてくるものがあります。それは感動といった大層なものではなくて、噛みしめる、とでも言うのか、「ああ、愛がテーマなんだ」と、今更といった感じで思い出されるような感覚。幼い少女が残酷な運命を受け入れ、盲目な愛を護ろうと歪んでいくのだけれど、だからといって過剰な演出やキャラクターは登場せず、最後まで、本当に最後まで描ききった物語。これは、誰かに感動を与えて残るのではなく、誰の心にも染み渡ることで残って欲しい作品だなぁ……などと柄にもなく。

そして今回のあとがき。
またやられました。作品よりも感動できるんじゃないでしょうかね、この先生のあとがきは。ブログであれ何であれ、こうして文字を打って楽しみを得ている人種にとっては、特に心に響くものがあるんじゃないかと。何はともあれ次回作プリーズ。
posted by: よしきち | ライトノベル感想 | 00:18 | comments(0) | trackbacks(3) | - |

Sir,Yes Sir!『サージャント・グリズリー』

JUGEMテーマ:読書

友達いない、彼女いない、オマケにお金もない。そんな不幸の塊のような主人公、玖留玖準のクラスに灰色熊のヌイグルミを被った軍人が転校してきた。しかし、クラスメイト達にはその姿がクールビューティーな美少女として映っているらしく、軍服姿にも、銃を所持している事にも突っ込もうとしないのだ。彼女の名前はグリズリー・軍曹。ちなみに姓がグリズリー、名が軍曹だという。何故か強引に友達にされてしまった準は、彼女の野太い声と、筋骨隆々なバディに悩ませられながらも、次々と降りかかってくる災難に立ち向かって……いや、振り回されていくのだが……。

カワイソ過ぎる主人公に涙を隠せない、シュールでカオスな第9回えんため大賞特別賞受賞作品。作者は本作がデビュー作となる彩峰優さん。レーベルはファミ通文庫。

ここまで不幸な主人公も珍しいのではないかと。いや、ことあるごとに撲殺されちゃう人とか、異世界に飛ばされて奴隷にされちゃう人とか、他にも不幸そうな主人公を挙げればきりがないんだけど、彼らには結局最後には何だかんだ好意を寄せてくれる女の子が沢山いるわけでして。それに比べたら、この準という主人公が受ける非道な仕打ちは読んでいて涙が止まりません。影が薄いが故に、正統派ヒロインっぽい子からは名前を覚えてもらえず、ツンデレっぽい子からもツンばっかりで全くデレをもらえず。しかも、真打ちヒロインはどう見ても野太い声の中年マッチョ男。これを不幸と呼ばずして何が不幸かって感じです。

しかし、その展開は読んでいて全く飽きませんでした。なんと言えばいいのやら、そう、例えるならアメとムチの、限りなくアメの比率が少ないムチムチ展開のような……ワケ分からん。とにかくこれは、考えたら負けなんだと割り切れれば、かなり楽しめます。新人さんということで描写や構成に幼さはあるものの、展開とキャラクターの力強さに引き込まれてしまいました。これは次回作に期待です。

蛇足ですが、声優の若本規夫さんがグリズリー軍曹を演じているんだと想像しながら読んでいたら、いつの間にかこれはこれでイイ……ハート、と思えてきました。本当にどうでもいいことですね。
posted by: よしきち | ライトノベル感想 | 15:46 | comments(0) | trackbacks(4) | - |

悪夢は扉の向こうに。『モーフィアスの教室』

JUGEMテーマ:読書

父を事故で失って以来、岸杜直人は度々悪夢にうなされてきた。その内容は曖昧だが、どうやら見ているものは毎回同じらしい。そのまま授業にでるのは辛いので、高校に行った後で保健室を訪ねるというのがいつものパターンだ。保健室では大抵、幼馴染みの綾乃が授業をサボっているので、その傍らで眠ることになる。別に怪しい事情があるわけではなくて、不思議と彼女の側では悪夢を見ないで済むからだ。だが、その日だけはいつもと少し違った。それまで見てきた悪夢ではなく、別の悪夢を見たのだ。クラスメイトの一人が教室で化け物に喰い殺される――そんな夢だった。すると、まるでタイミングを計ったかのように、そのクラスメイトが意識が昏倒した状態で運ばれてきて……。

眠ってしまうと魂を喰われる――現実世界を浸食し始めた「悪夢」の恐怖と、巻き込まれてしまったクラスメイト達のために秘密を探ろうとする主人公の姿を描く。レーベルは電撃文庫。作者は三上延先生。

取り敢えず、幼馴染みの久世綾乃さんにはやられました。どっからどう見ても典型的なツンデレなんですが、派手さを控えた文体で描かれると、もっとこう、世俗的なものから切り離された高尚的存在にすら思えてくるから不思議。この物語の鍵となるキャラクターなので詳しく言及できないのが残念なんですが、ストーリーの端々に見え隠れする彼女の仕草や、ラストの保健室での主人公を見守る様子は読んでいて心が温まります。

派手さや目新しさはないものの、とにかく全体的に描写が上手い。物語を理路整然と組み立てている感じがして、全体的に読みやすいんですよね。今のところ「シャドウテイカーシリーズ」しか三上先生の作品は読んだことがないんですが、やはりテイストはそのまま受け継がれている感じ。日常が非日常に塗り替えられていく過程も、サスペンス感が盛り込まれていて楽しめました。これは次巻も期待です。
posted by: よしきち | ライトノベル感想 | 20:19 | comments(0) | trackbacks(0) | - |

恋心、混線中。『ロミオの災難』

JUGEMテーマ:読書

演劇部に入部したのは、一目惚れした彼女がいたから。ただ、それだけ。もちろん向こうはそんな事なんて夢にも思っていないだろうから、これは一方的な恋のはずだった。演劇部には5人の部員がいるけど、それぞれが別の想いを抱えていて、その点と線で結ばれた関係図は決して交わることなんてない。それがガラリと変わってしまったのは、文化祭の演目を決めたときからだった。『ロミオとジュリエット』、その役割を割り振られた途端に、4人の役者の心は「僕=ロミオ」を中心に渦巻きはじめて……。

『好き』という気持ちが何らかの意思によって支配されてしまったら……という、少し怖いシチュエーションに高校生達の複雑な恋心を絡めて描く。レーベルは電撃文庫。作者は来楽零先生。

ああ、なんて強い子達なんだろう。
読み終えたときに思わず、笑みと共にそんな感想が漏れてしまいました。何たってこの作品の登場人物達が戦わなければならないのは、自分の心に取り憑いてしまった何かの強い『意志』なのですから。つまりは、自分自身が敵なわけで。どんな強い敵でも剣なり銃なり己の拳なりで叩き伏せてしまう主人公というのも格好いいかも知れません。だけど、こうやって自分を必死に抑え込みながら、くじけそうな仲間を気遣いながら、心を支配する『意思』に立ち向おうとする彼らの姿には格別のカッコ良さがあるなぁと。

更に「心が支配されてしまう」というちょっぴり背徳感の漂うテーマもお気に入り。村上さんという普段は感情を露出させない気の強い女の子が、「本当に不本意」なんだけど愛を告白するシーンなどは身もだえしました。これってツンデレの変形?主人公も、ハーレム状態に陥りながらも何気に理性的に動こうとする辺りが好感が持てる。それぞれ別の想いを抱いていたはずだった五人が、入り込んできた恋心に戸惑ってコメディタッチな騒動を繰り広げる様子もこの作品の醍醐味。続き物ではないけれど、その後の彼らの行き先が気になった作品でした。
posted by: よしきち | ライトノベル感想 | 09:37 | comments(0) | trackbacks(2) | - |

無くしたモノをもう一度。『さよならピアノソナタ』

さよならピアノソナタ (電撃文庫 す 9-6)
さよならピアノソナタ (電撃文庫 す 9-6)
杉井 光
JUGEMテーマ:読書

あの「世界の果ての百貨店」で出会った少女と、もう一度再会した。頑なに誰も寄せ付けようとしない彼女は、有名な天才ピアニスト。関わらないように努めていたのだけれども、彼女が自らこちらのテリトリーを犯してきたことで話はややこしい方向へ。一緒にロックをやろうと迫る元体育会系の幼なじみ、そして、革命とロックに生きることを旨とする天才軍師系の先輩までもが絡んできて、いつの間にか気がつけば天才ピアニストとエレキギター勝負をする羽目に。でも、なんでピアノを弾かないのだろうか。転校初日に話していた、「六月になったら、私は消えるから」という彼女の言葉が気になって……。

未来の見えない少年と、未来の見えてしまった少女が織りなす、旋律に満ちあふれたボーイ・ミーツ・ガール・ストーリー。作者は「神様のメモ帳」等で知られる杉井光先生、レーベルは電撃文庫。

いやぁ……冒頭から始まる美しいドラマに思わず見とれてしまいました。何度も繰り返し読んできたような始まりなんだけれど、やっぱり美しいものは美しいとしか言いようがないんですよねぇ。これから二人はどうなるの?みたいな期待感にどうしても胸が膨らんでしまって。しかも、この人の作風は「神様のメモ帳」から感じていたんだけど、音楽というものが重要なファクターになっていて、事実、この作品では所狭しと音楽関連の話題や用語が登場するんですよね。普通、ロックやポップな音楽から縁遠いよしきちみたいな人間が、これだけ理解不能な単語並べ立てられたら閉口しそうなものですけど、それが全くなかった。主人公の口から直接語られていたからなのか、それとも上手く物語と融合していたのか。うん、多分そのどっちもだと思うんですが、とにかくそれが心地良い。文字と音楽が織りなす美しい描写に素直に感動してしまいましたよ。

あと、一見するとハーレム状態な夢作品なんだけれど、それが一筋縄ではいかないという展開も面白いですね。確かにライトノベル向けの味付けされたキャラクター達なんだけども、ちゃんと肝心な所では大人は大人らしく、未成年は未成年らしく行動している辺りがハッとさせられます。あ、神楽坂先輩は別格ですよ?

そして、架空の話だと高を括っているところへ現れる、現実味溢れる描写。例えば何気ない市役所であったり、ゴミ処理施設であったり、違法な回収業者であったりと。「神様のメモ帳」でも使っていた手法なんだけども、ウソにリアルを混ぜるやり方が杉井先生は本当に上手いんですよね。それは登場人物たちも同じで、「世界の果ての百貨店」を目指した少年少女と、その二人の父親は、ある意味で本当に理想的な人達だったんだなぁと思います。主人公達ほど盲目に熱くもなれず、かといって父親ズみたいに大人になりきれていない身としては嫉妬してしまうほどに。

ただ、ラストの終わり方に関して言えば、ちょっと物足りなかったかなぁ……とも。盛り上がりが良かっただけに、突然プッツリ切れてしまったような感じが否めないんですよね。続編が確実に出るんだったら良いんですが。……と言うわけで、よしきちは民族音楽研究部の活躍する姿を希望します。
posted by: よしきち | ライトノベル感想 | 19:37 | comments(0) | trackbacks(4) | - |

誰がために。『スプライトシュピーゲル 3』

スプライトシュピーゲル 3 (3) (富士見ファンタジア文庫 136-10)
スプライトシュピーゲル 3 (3) (富士見ファンタジア文庫 136-10)
冲方 丁

暗殺、襲撃、バイオテロ、電子テロ、その全てがミリオポリス内で24時間以内に決行される恐れがあるのだという。事前にその事を察知したMSSは、内務大臣にこの事を伝えようとするが、全く取り合って貰えない。その直後にMSSの長官であるヘルガが襲撃を受けてしまい、果てには内務大臣も謎のウィルスによって暗殺されてしまう。情報の端々から見えてくる、内部協力者の影。アゲハ、ツバメ、ヒビナ、3人の特甲少女達はいつも通りに出撃するのだが――

スニーカー文庫刊『オイレンシュピーゲル』と世界観・時間軸を共有するもう一つの物語。泥沼のような憎しみに立ち向かう、『妖精』と呼ばれる3人の少女達の戦いを描く。作者は『マルドゥック・スクランブル』などで知られるSF作家、冲方丁先生。レーベルは富士見ファンタジア文庫。

あまり読みやすくはなっていないけど、キャラクターの魅力は健在でした。ヒビナの冬真に対して見せる仕草が何とも可愛すぎ。その好意を寄せる理由というのが凄まじいんですが、まあ、それでこその爆弾魔と言ったところで。冬真自身も、今回は曖昧な立場ではなく、彼なりの覚悟をもって事件に挑んでいたのが心強い。アゲハ達の中で、自然と彼の存在が大切なものになっていたという描写は心が温まります。そして今回大躍進を遂げたのが、我らがコーラス(接続官)の水無月君。いままで単にお笑い要員としか認識していなかったんですが、大きく株を上げました。無駄に高いテンションとは裏腹の、ラストで見せる彼の姿が何とも印象的です。次回も冬真&水無月コンビ希望。

いつも見知らぬ誰かが見知らぬ場所で、見知らぬ誰かのために戦っている。例えばそれが警察であったり、軍隊であったりと。でも、人々の先入観からしてみれば、警察は権力を振りかざす横暴な存在で、軍隊は民衆に銃を向けたがる野蛮な組織。MSSに属する3人の特甲少女達も、もちろんその先入観から免れることは出来ないわけで。日陰者の美徳というか、いじらしさというか。今回は、治安維持組織に属する彼女たちのジレンマについて切り込んでいたところに惹かれてしまいました。

物語もいよいよ、という感じですかね。今回のラストでとった3人の行動には驚かされましたけど、その後の結末を読むに至って思わず拍手したい気分になりました。それでも物語の根本的そのものの解決にはほど遠いわけで。本当に彼女たちが苦しまなくても済むような時代が来るのか、今後の展開が気になります。
posted by: よしきち | ライトノベル感想 | 18:49 | comments(0) | trackbacks(2) | - |

失われた記憶を求めて。『オイレンシュピーゲル 3』

オイレンシュピーゲル 3 (3) (角川スニーカー文庫 200-3)
オイレンシュピーゲル 3 (3) (角川スニーカー文庫 200-3)
冲方 丁

今では平気になった、仕事で人を殺すときの感覚。だけど、一番最初に仕事で出撃した時の記憶がどうしても思い出せない。一体、あの時に何があったというのか。思い出す必要すら感じていなかったのに、それを思い出さざるをえなくなった、『黒犬』『紅犬』『白犬』と呼ばれる3人の少女達。それぞれの元に訪れる、忘れていた想いとは……。

クールでキュートでグロテスクな、3人の少女たちの戦いを描く第3弾。作者は『マルドゥック・スクランブル』などで知られるSF作家、冲方丁先生。レーベルはスニーカー文庫。今作は3人それぞれを主人公に据えた、3つの短編から構成されています。

『Like Biue Murder』
黒犬こと涼月・ディートリッヒ・シュワルツの話。何を隠そう、本作で一番好きな登場人物は彼女な訳でして。クールで粗暴で怠け者、三拍子揃ったどうしようもない性格ではあるけれど、その反面、学校に通うことを希望していたりするなど年相応の魅力を持ち合わせていたりするんですよね。しかも、そんな彼女にひたすら好意を抱き続ける吹雪の存在と組み合わせると、その破壊力は優に3倍は超えそうです。なんと言ってもよしきちはこの手の少年少女が登場する作品に弱いわけですよ。王子様がお姫様を救う?的な全くベタな話ではあるんですが、吹雪の境遇に嫉妬を覚えながらも、彼の底抜けの好意に徐々に心境を変化させていく涼月の過程を知ることが出来て満足でした。

『Scarlet Ob-La-Da』
紅犬こと陽炎・ザビーネ・クルツリンガーの話。自分探しの「旅」というか「戦い」とでも言いますか。真実を求めて始めたことが、いつの間にか人助けに変わっていたというラストは読み終えてからホロリとさせられました。もちろん、自分のためでもあったんでしょうが、少しでも救いの残されたラストは良いなぁと。最後に彼女に投げかけられた感謝の言葉、「私を思い出してくれてありがとう」が印象的。

『Holy Week Rainbow』
白犬こと夕霧・クニグンデ・モレンツの話。……と言いつつも、よしきちの興味は完全に白露君に傾いていました。彼が砂漠の真ん中で何を思い、何をしていたのか。その口から語られる一端と、提示された情報から色々想像するだけでも何だか切なくなってしまいます。たしか、昔『ムーミン』を観ていたときに、孤独な灯台守の話が出てきたように記憶しているんですが、妙にそれと重なってしまいまして。わかってはいるんだけど、そんな彼と夕霧が恋に落ちてしまうのは読んでいて心が痛むんですよねぇ……。

前作ほどの派手さはないんですが、その代わりに一人一人にスポットをあてたストーリーが何とも心地よかったです。衝撃の真実(特に涼月の!)が明らかになって、いよいよ彼女達の物語も佳境に入り始めた感じ。スプライトシュピーゲル3も購入済みなので、すぐに読み始めようかと思います。
posted by: よしきち | ライトノベル感想 | 15:35 | comments(0) | trackbacks(2) | - |