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2007.05.27 Sunday
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その道はただそこに『奏でる少女の道行きは』
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奏でる少女の道行きは
細音 啓
なぜやらなければならないのか?
日々の行いに疑問を感じた少女は、天賦の才能を持ちながら、あえて別の世界へと飛び込んだ。しかしそこに待っていたのは、希望に満ちた日々ではなく、ただただ、そこにすがり付こうとする焦燥の毎日だった。大切な人々を守ることもできず、自分自身の無力さに苛まれ、不安に過ごす日々。友人たちとは違う道を歩んでしまうことを恐れ、どうしても少女は最初の一歩が踏み出せない。そうこうしているうちに、運命は再び選択を迫ってきて――
招き寄せたいものを、それと同じ色の触媒を通して召還する『名詠式』。それが技術として確立され、専修学校の就職先として実際に存在する世界。詩的な讃来歌(オラトリオ)と、迷いながらも成長しようとする少女たちの織りなす召還ファンタジー。
作者は細音啓(さざね・けい)先生。第一八回ファンタジア長編小説大賞の佳作受賞作品である『イヴは夜明けに微笑んで』の続編だ。シリーズを通しての題名は、『黄昏色の詠使い』。
今回は、前作の触媒暴走事件からそう経っていない夏期休暇のお話。位置づけ的には、主人公であるネイトやクルーエルではなく、その周囲の人物を深く掘り下げるための別の視点的な作品ということらしい。そのメインキャラとして、前作でも少々登場したエイダという少女が選ばれている。
と、言うよりも。
どちらかといえばエイダが主人公の話といっていいだろう。もちろん本来の主人公であるネイトたちも健在だが、感情の配分というか、描かれ方でも彼女に重点が置かれているのは間違いない。(おそらくは)この作品の趣旨であろう、名詠式を学ぶ「少年少女たちの青春模様」をよく表現していて、読んでいる側としても爽やかな読後感が残る印象だ。
前作で不備を感じた人物に対する焦点の当て方も、本作品ではよく練られており、エイダがメインでありながら同時にほかの視点でも物語が進んでいく様子は、読んでいて非常に心地よかった。少々、登場人物たちの行動や言動ににご都合的な部分が含まれていたようにも感じたが、最後にエイダの元へ物語を収束させていく手法は、彼女を引き立てるのに成功しているのではないだろうか。つまりは、よしきちは彼女のことがとっても気に入ってしまったというわけで。
このシリーズの見所は、相変わらず少女たちの選んだ行き先にあるようだ。エイダが何を思い、何を感じ、そして何を選んだのか。美しい讃来歌(オラトリオ)と共に戦う、凛々しい彼女の姿が印象に残る作品だった。
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2007.05.24 Thursday
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『ながされて藍蘭島』第8話
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メイドさん!
ゾウのメイドさん!
待ちに待ったちかげの当番回であるにもかかわらず、ある意味でメイドのぱな子さんが異彩を放っていた今回。まあ、瞳を閉じれば彼女でも萌えられるんだけどね!
今回は島一番の物知り少女、ちかげが登場。今までも出番はあったんだけど、どうも扱いが微妙でうかばれない存在だった彼女、しかし、今回はそれを覆すかのようなサービスの連続です。その際どさといったら、他の誰にも持ち得ない不思議な魅力に満ちあふれています。特に、寿司職人のコスプレしながらの『アワビ』発言は、大きいお友達に多大な悪影響を及ぼすのではないかと。
後半の湯煙シーンでは、ちかげの――と言うより行人の描写に力が入っていて思わず脱力。そりゃ、上気した彼の表情には女性を引きつけるものがあるのかも知れませんが。その後の胸板とか、更にそのアンダーとか、興奮しているのはちかげばっかり!ぱな子さんの大胆さにも驚かされますが、ちかげの行動力にもびっくりですよ。最後は風呂シーンに欠かせない、覗き見キャラの正統な末路をしっかり踏んでいるし(笑)
しかし、行人を意識するようになるきっかけがのぞきだなんてねぇ……。
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2007.05.24 Thursday
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『ひとひら』第8話
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ねこぱーんち!
野乃さん、それは桂木先輩でなくとも萌えてます。しかも何気に「にゃん」て言ってるし……。
冒頭から麦がメイド姿で登場するなどテンション高いです今回。
さて、いよいよ劇の本番となったわけですが、麦の演技なのか地なのか分からないボソボソ演技に引き続いて、野乃さんの声まで出なくなってしまうというまさに大ピンチで幕開けです。オマケに反動で麦が素に戻って頭の中真っ白、観客も白けてしまう極限状況。ここまで来たら、観ている側も居たたまれない気分になってきますな。さてさて、麦の実力モードは、どこまでこの舞台を立ち直させることが出来るのか……。
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2007.05.22 Tuesday
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『精霊の守人』第7話
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あるぇ?
結局、前回のアレは本物のバルサとチャグムだったってことですか?
そこのところどうなのよ、といった具合なんですが。
それまで王宮の中の世界しか知らなかったチャグムが、外の世界をようやく落ち着いて観察しはじめた今回。お金の価値というものを通じてこの世の中の仕組みを徐々に理解しはじめたチャグムは、バルサに対して、自分が多大な負担を強いていると考え始める。だけれども、その心情を吐露したとき、バルサは軽く笑って「お前は一切考えなくてもいいんだ」と答える。安堵したチャグムの泣き崩れようは、やっぱり子供そのもの。いやー、泣けますね。他人の子供ではあるけれど、そこまでチャグムの人生に対して言い切れる包容力と言いますか。母親らしい彼女の姿勢に感動ですよ。
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2007.05.17 Thursday
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『ながされて藍蘭島』第7話
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お師匠様!
アバンタイトルとAパート冒頭で声が違って聞こえるのは気のせいですか?
……そうですか気のせいですか。くすん。
というわけで今回は2本立て。
犬を相手にファンシーなサバイバルゲームが繰り広げられるAパート、可愛い顔をしながら犬猫同士で血みどろの戦闘が繰り広げられる展開を期待していたよしきちにとっては、少々肩すかしを食らった感じ。あやねはやっぱりアレだし。
というか、まち姉は鬼ですな。
Bパートでは行人がいきなり恐怖体験。
……と思いきや、まちが夜這いしてました。花見を提案する彼女の、いい具合にやる気のない口調が妙にカワイイ。行人に対する歪んだ愛情がひしひしと伝わってきますな。美味しいところはすずが持って行ってしまったけれど。
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2007.05.17 Thursday
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『ひとひら』第7話
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『ひとひら』の公演ポスターも出来上がり、麦の特訓も徐々に効果を見せ始めた今回。桂木先輩に夢中だったちとせも、ようやく麦のことを脅威と感じ始めたようで、心を入れ替えて演劇に打ち込んでいく模様。
それにしても不器用な二人、野乃と榊にはやきもきさせられますなぁ。野乃は意地っ張りだし、榊は頑固者、互いがあれだけ思い合っているというのに、現在の状況はあまりにも切ない。榊の中の人(雪野五月さん)の力量もあって、後半の彼女の独白はかなりズンと心に響きましたよ。願わくば、2人には幸せな結末が訪れることを。
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2007.05.12 Saturday
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『精霊の守人』第6話
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チャグムは髪を切って覚悟を決め、バルサも傷の癒えない体を押してタンダの元を立つ。ようやく2人の話が再び動き始めたって感じですか。前回、人買いに囚われていた人々を開放したのは、追っ手を欺くためだったというわけですね。それにしてもタンダのやや逆ギレっぽい愚痴には愛が感じられますなぁ。タンダちょっといい奴。
とはいっても、気になるのは最後シーン。2人が谷底へ突き落とされるところ、アレって別人だったってことですか?トロガイ婆さんも意味深なこと言ってましたけど、自力で登ってきたにしては少々尺が短すぎるような気が……
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2007.05.10 Thursday
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『ながされて藍蘭島』第6話
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掛け流し!
源泉掛け流しだったのか!
藍蘭島は恐らく火山の噴火によって出来た島なのでしょう。温泉が湧き出ているということは、まだ活火山であるということの証!(適当)
……それで? って言われるとそれだけの話なんですが。
前回、そして今回に続いてやや話がトーンダウンしてきているのは否めない感じかな。すずと行人の関係を深めていきたい方針なのだろうけど、どうもそれが続くと話が散漫になるような気がする。この辺りで他のヒロイン達との交流も深めて欲しいんですがね。
とにかく、あやねとかちかげとか、クローズアップして欲しいキャラが前面に出でてこないというのは何とももどかしい限り、作画が良質なだけに残念としか言いようがない。来週こそは期待したいのですが。
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2007.05.10 Thursday
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『ひとひら』第6話
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にんにくと青汁とゴーヤで酔うことが出来る野乃先輩に乾杯。
ってか、アレすんごく口とか臭くなると思うんですけど。麦はなにも感じなかったのだろうか。それともあれは彼女なりの気遣い……?
いやー、あれだけ酷い仕打ちを受けながらも、相手の気持ちを考えて行動することが出来るなんて、麦ちゃんは実にいい子です。野乃先輩が意地悪な姑に思えてきた今日この頃。男子達の肩身の狭さもいい具合にリアリティがあって面白かった。そうそう、怒りをモロにぶつけるわけにもいかないから、ああやって桂木先輩のように別の場所で発散するしかないんですよね。演劇部って大抵女子部員の方が多いから。
……あ、思い出したら涙が。
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2007.05.03 Thursday
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幸せをたずねて。『バニラ―A sweet partner』
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バニラ―A sweet partner
アサウラ
不幸な人生だった。大切な人が死に、追い打ちを掛けるように裏切りと悪意がこの身に降りかかる。誰も信じてくれなかった。誰も助けてくれなかった。
海棠ケイは、同じように不幸を背負う梔ナオと共に、ある決心をする。それは、力を手に入れること。銃という名の、無敵の力をこの手に収めることだった。
しかし、狙撃という手段は次第に彼女たち自身の首を絞めていく。信念を貫こうとする刑事達と、プライドを貫こうとする警察と、そして無責任な観衆達を巻き込んで2人はどこへと向かうのか――。
2人の少女の逃避行を描くバイオレンス・アクション。作者は第5回SD大賞受賞作家のアサウラ先生。レーベルはスーパーダッシュ文庫。
この作品は、銃の所持が自衛手段として法的に認められ、それに応じて社会変化を起こした日本が舞台の話。これは先生のデビュー作である『黄色い花の紅』から引き継がれた世界観で、本作にも前作の登場人物が何人か登場している。その為か、世界観に関する説明はほとんど無く、本作がはじめてという人には少々わかりにくい内容かも知れない。
ただし、その描写力や構成力は間違いなく圧倒的。
ライトノベルと呼称するには少々気の引ける紙数であることや、それに加えてバイオレンス・アクションというジャンルであることを差し引いても、一つの物語として完成度は高い。近いところで言えば、良質なハリウッド映画のような、スピード感と物語性を兼ね備えた作品――というか、かなりそれを意識した作りに感じられる。いや、良い意味で。
この物語には、2人の少女が主人公として登場する。彼女たちは、常識ある人間から見ればとても非常識で、危険きわまりない存在だ。そして、もう一組の主人公として、2人の刑事が登場する。こちらの方は、世の中の理、或いは良心的な存在に位置づけられていて、読み手としては非常にやきもきさせられる存在だ。他にも、様々な立場を代表する人物がこの作品には登場する。彼ら・彼女らは、それぞれがそれぞれの立場で悩み、奮闘し、そして事件は収束へと向かっていくのだ。その様は、読んでいて非常に小気味が良かった。賛同できるキャラと、そうでないキャラとにもそれぞれ「理由」というか「リアリティ」のようなものが息づいていた。
かなり読み手を選ぶ作品ではあるけれど――というか、ライトノベルっぽくないけれど、登場人物達の信念や想いといったものは充分伝わってくる。世界観だけで敬遠してしまう人もいるかも知れないが、ぜひ、一度手にとって読んで貰いたい作品の一つだ。
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