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王女の異常な感情。『ユーフォリ・テクニカ―王立技術院物語』


ユーフォリ・テクニカ―王立技術院物語
ユーフォリ・テクニカ―王立技術院物語
定金 伸治

19世紀末の叡理国。新世紀に繋がる新技術として注目を浴びる『水気』の研究者ネル・ビゼンセツリは、東洋人であるにも拘わらず、叡理国の王立技術院に講師として招かれ渡航を果たした。しかし、そこで待ち受けていたのは、紳士的な態度の裏で見え隠れする人々の冷ややかな視線。自国の誇りを第一とする、歴史の古い国ならではの明確な人種差別だった。
ところが、そんなネルのもとに一人の少女が押しかけてくる。ネルのファンだと話す少女は知識も情熱も体力も申し分なし。常識のなさと感情の起伏の激しさを除けば、研究者としてこれ以上望むものはない、といえるほどの人材だった。ただし、この国の王女であることを考慮しなければの話なのだが……。

作者はこの道15年のベテラン作家、定金伸治先生。
レーベルはC★NOVELSファンタジア(中央公論新社)
内容は、暴走王女天才科学者が血の滲むような努力の果てに『一つの成果』を手に入れるというもの。まさにプロジェクトXである。

本作の最大の魅力は、なんと言っても暴走王女の活躍だろう。
研究の成果を得るために彼女が起こす様々な行動は、恐らく、過去のどの作品のヒロインにも見られない常軌を逸したものがある。狂気、と言い換えてもいいぐらいだ。ストーカー行為だけに留まらず、彼女が行った立ち振る舞いにはおおよそ常識というものが当てはまらないのである。
だが、その異常っぷりが逆に、これだけの辛くて厳しい研究を成し遂げられるのだろうという奇妙な説得感を持たせているのだから面白い。とにかく、王女様の異常な情熱に支えられた作品だった。もちろんそれだけではないが。

本作品では、研究室に在籍した過去を持つという作者の経験が非常に生かされている。架空の技術である『水気』に関する設定や、その他の実在する技術に関する記述、そして研究室での苦労話などは、体験した者だけにしか分からない説得力がある。難しすぎてよく分からない部分もあったが、それはガジェットとして考えれば立派に役割を果たしていると言えるだろう。最後の方で駆け足になってしまった構成や、ご都合主義的な展開も少々目についたが全ては王女様の前では吹き飛んでしまうのである。変わったヒロインや、熱い技術者達のドラマをご所望の方にはお勧めの作品だ。
posted by: よしきち | ライトノベル感想 | 21:44 | comments(0) | trackbacks(3) | - |

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コメント
 









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2007/02/01 8:51 AM
Posted by: booklines.net
[定金伸治] ユーフォリ・テクニカ ― 王立技術院物語
時は十九世紀。産業革命の最先端技術「水気」で楽器的な成果をあげたネルは、東洋人としてはじめて講師として、叡理国の王立技術員に招聘された。だがどうやら東洋人であるネルを気に食わない輩がいるようで、設備は...
2007/02/06 9:54 PM
Posted by: 読了本棚
ユーフォリ・テクニカ
真空からエネルギーを取り出し、水の裡に封じる。産業革命を推し進め、新世紀に繋がる最先端の技術、「水気」―十九世紀末叡理国、ネルは東洋人として初めて王立技術院応用水気技術学科に赴任してきた。だが、研究員の募集に応募してきたのは、情熱はあるが常識は蹴倒す
2007/02/11 11:35 PM
Posted by: ラノベ365日
ユーフォリ・テクニカ―王立技術院物語/定金伸治
ユーフォリ・テクニカ―王立技術院物語定金 伸治 中央公論新社 2006-12by G-Tools 【19世紀末、叡理国。東洋人として初めて王立技術院に講師に赴任したネル。だが、研究員の募集に応募してきたのは、情熱はあるが破天荒な少女エルフェールのみ。しかも彼女は王女だとい